2009年03月24日

第66回「生まれてからずっと――チェンマイの障害者施設訪問記――」

11月上旬の週末を利用し、二十数年前から在タイし、タイでのNGO活動に詳しいSさんのご案内で、チェンマイを旅してきた。

往復を自動車で移動するのは初めての体験だった。片道約7時間の道中、タイ中部から北部にかけての植生や地形の変化が楽しめ飽きることはなかった。タイの平野部は風景の変化に乏しいといわれるが、そんなことはない。街道筋の道路傍で売られる農産物もその土地土地で変化が見られる・・・。

 

チェンマイ滞在中、駆け足ではあったが、障害をお持ちの方の共同生活施設、HIV感染者(タイ人女性)の共同作業場、義肢を作る財団、職業訓練センター(障害者向け)などを訪問した。


雨の日曜日の朝、最初に訪問したのはS財団。
ここはチェンマイ市内を流れるピン川の近くの新興住宅地に隣接している身体の不自由な方々の「暮らしの場」だ。緑の多い広い敷地の中に清潔な建物が点在している。お休みなので事務職員のような方はいない。私たちが到着すると、入所者の方々が出てきてくれた。男女全部で25人が生活している。

PB020011.JPG

 

しばらく施設をみてまわったあと、何人かの方にどれくらいの期間滞在しているか?聞いてみた。すると・・・

 

「生まれてからずっと・・・」

 

という方が実に多かった。つまり入所者が固定され、新しい入所者もほとんどないということだ。
タイは、道路や建物のバリアフリーが進んでいない。年金など制度面の問題もあるだろう。自宅や地元コミュニティーに戻って生活するということがなかなか難しいことも良く分かる。


ただ、今回訪問したボランティア団体がそうだというわけではないが、大きな組織も小規模な組織も、一定の援助が受けられるようになると、障害者の現状を維持することで収入を確保する、健常者のための一種のビジネスのようになってしまうこともありうるのかな・・・と感じてしまった。

 

このような主旨のことを筆者が主宰する任意のコミュニティ:バーンタオ村の日刊メールマガジンで会員に投げかけたところ、今年日本でアジアとの草の根交流を推進するNPOを立ち上げた若い友人からのメールをもらった。

 

「チェンマイでは色々とご視察されたんですね。『障害者の現状を維持することで収入を確保する、健常者のための一種のビジネス、、』とありましたが、やはり組織維持、人件費・管理費を得ようとすると、どうしてもそのような傾向があると思います。(中略)日本のNGO/NPOでは、どうしてもそのようなジレンマがあるのが現状で、健全な組織運営という意味では、食いっぷちは各々が持っていた方が、まだ良いのかもしれません。」

 彼は北タイの山岳民族の村に住み込んで活動したり、大手のNPOでの活動体験もある。

彼が今回立ち上げたNPOは人件費、管理費という固定費を寄付などからださないようにしているそうだ。従って、活動する彼本人の食いっぷちをどのように生み出すかが、目下の課題だそうだ。 


筆者はボランティアの世界で汗をかいているわけではない。こんなことを言うべきではないということは重々承知だ。しかし健気に対応してくれた車椅子の女の子たちと言葉を交わしていると、上記のジレンマが頭に浮かんでしまいチェンマイからバンコクに戻ってもしばらく考え込んでしまった。

 

タイに住まわせてもらっている者として、タイ社会の暗部に灯を当てたいという決意はある。どのような立ち位置で関わるか、それを今回の旅を題材に考えるつもりだ。

 

冒頭のS財団内のショップでは、押し花細工やレース織りなどを製作販売している。
まずは、こうしたものをまとめて購入し、細々でも継続して通販で流通していく仕組みを作れないかな?と思った。軌道に乗れば、彼ら彼女らが自前で経営するショップが、施設を出て、チェンマイ市内の目抜き通りに出来上がる、ということを夢想してみたのだが・・・いかがだろうか?
(谷田貝)

(2008年11月掲載)

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posted by バーンタオ at 23:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 福祉関連
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